昭和の刑事ドラマ

昭和懐古

昭和のテレビは刑事ドラマ全盛期であった。
特に昭和40年代後半から50年代前半、つまり1970年代は刑事ドラマが乱立していた時代であった。

ヒット作だけ挙げてみても、「太陽にほえろ!」「Gメン75」「特捜最前線」「夜明けの刑事」など、数年に渡ってメンバーを変えながら延々と一つの番組が続いていた。

最も長く続いていたのは「特捜最前線」の前番組「特別捜査機動隊」で、何と16年も続いていたという。
これは日本初の一時間ドラマであり、そして「機動隊」が発足するきっかけにもなったというから凄い。
まさにドラマの域を超えて日本という国自体を改革したといっても過言ではない。

更に当時の警視総監も「特別捜査機動隊」のファンであったという!
これほど凄いドラマなのに、何故か再放送の機会は私自身は一度もお目にかかったことはない。

恐らくフィルムもかなり喪失しているんだろう。
昭和30年代などはまだフィルム自体高価で、上書きは当たり前のようにされていたからだ。

しかしこれほどまでの名作ならば日本の文化遺産といっても過言ではない。
ここから刑事ドラマはスタートしたのだ。
「太陽にほえろ!」も「特別捜査機動隊」がなければ誕生しなかったかもしれない。

昭和の刑事ドラマの特徴は大抵7人前後ぐらいのチームで編成されている。
これは「7人の刑事」の影響も大きいだろう。
私なんぞ、本物の「刑事課」も7人のグループで編成されているのだと信じていた。

だから昭和刑事ドラマは「主人公」が一人ではなく、集団といったケースが多い。
確かに「夜明けの刑事」始め、チームはあるけれど主人公がきちんと設定されているものもあったが。

昭和ドラマは平成ドラマと違い、前述したように視聴率さえ取れれば何クールでも続く。
それに引き換え、平成ドラマは基本ワンクール、それも大概特番がクールの変わり目に入るから10話ぐらいしかない。
昭和のドラマに慣れていた私はたった3ヶ月、10話で一つの作品が終わることに相当違和感を感じている。

あの半沢直樹さえもワンクールで終わったのだ。
俳優のスケジュールもワンクール基本で組んでいるのだろう。
だから昭和みたいにスポンサーの意向で番組延長なんてのはもうこれからもないだろう。

3ヶ月ごとに新作を創るのだから、アイデアも切れるはずだ。
その点、テレビ朝日は「相棒」や「科捜研の女」などをシリーズ化し、上手く回している。

なぜテレ朝はそれが出来るのか?
それはテレ朝が刑事ドラマを捨てなかったからだと思う。
ドラマをシリーズ化するのに最も適しているのがネタが豊富な刑事ドラマだろうから。

昭和の終わり、昭和60年代は次々と刑事ドラマが姿を消していった時期だった。
正直、民放はテレビ朝日以外は皆、トレンディドラマやコメディードラマに走っていっていた。
フジテレビなんてその筆頭格だった。

テレビ朝日は「特捜最前線」が昭和62年に終了した後も、「ベイシティコップ」といういかりや長介が刑事役のデビューを飾るという記念すべき番組で刑事ドラマを繋いでいき、そしてそれが長寿作品である「はぐれ刑事純情派」に繋がっていった。

「はぐれ刑事純情派」は半年おきに「さすらい刑事旅情派」と交代で延々と続き、今の「相棒」などのシリーズ化の基盤となっていったのだ。

刑事ドラマは平成に入るとますます減少し、時代劇と並んで若者にそっぽを向かれるジャンルとなっていった。
しかし、そのツケを今、テレビ朝日以外の局は大きく払っている。

TBSは「半沢直樹」のシリーズ化に失敗した。
かろうじて「下町ロケット」の続編を成功させたが、かつての「ドラマのTBS」の面影はない。

刑事ドラマは俳優の演技力、そしてアクションを必要とする。
視聴者も目の肥えた年配だから、誤魔化せない。
だから刑事ドラマ減退は、名優を育てる機会損失になっていたのである。

今、重厚感溢れる幹部役を演じられる役者はかなり少ない。
だから北大路欣也、杉良太郎らかつて時代劇で培ってきた実力や貫禄を見せつけ、60代未満の俳優が本来演じるポジションを未だにキープしているのだ。

昭和30年代以降生まれの俳優でこれほどまでの重圧感を醸し出せる人はいない。
香川照之が「半沢直樹」で常務役を見事に演じたが、彼に匹敵する俳優は同年代ではほとんど育っていない。

おまけにすぐジャニーズ、ジャニーズである。
これでは演技力のある俳優は飯が食って行けず、地道に俳優修業する人も夢がない。
レベルが下がっていくのは当然である。

昭和の刑事ドラマで驚くのは、ボス役が若いことだ。
「太陽にほえろ!」の石原裕次郎は番組開始当時は何と37歳だった。
「夜明けの刑事」の課長役だった石立鉄夫は32歳だった!

今の30代であれだけ貫禄あるボス役が出来る俳優は悲しいがゼロだろう。

何も俳優だけでなく、一般人も含めて全体的に現在は昭和に比べて大人たちが「幼稚化」しているのであるが。
かくいう私もその一人である。

北大路欣也や杉良太郎も70代。早く後継の役者が育ってくれないと、近い将来、こういった貫禄が求められる幹部役が誰もしっかり演じられなくなってしまう。
池井戸ドラマではこういう役者は絶対に必要なのだ。

その為にも、刑事ドラマの復活を各局が真剣に検討してほしい。
「相棒」のように主人公が強烈な個性なのもまたいいが、個人的には昭和のような「チーム制」の刑事ドラマを今一度作ってほしい。

それが出来るノウハウを一番持っているのはTBSだと思う。
キイハンターからGメン75まで東映アクションシリーズを述べ15年間続けた安定した実力。
特に緊迫感あるアクションを交えた刑事ドラマを作るセンスはピカイチだと思う。

「太陽にほえろ!」は刑事ドラマとはいえ、青春ドラマともいえる雰囲気であり、主役はどちらかといえば”殉職交代“する若手刑事のイメージだ。
日テレ独特の明るいアクションであり、そこがTBSと違う特色だ。

テレ朝はTBSをもっと地味に堅実に描いている印象だ。
「特捜最前線」は「Gメン75」と同じ東映作品だが、Gメンの製作スタッフも多く携わっており、何と同じストーリーの話まで存在するのだ。(Gメン32話『死んだはずの女』)

だからGメンに似た雰囲気を醸し出しているのだが、香港シリーズなど派手な荒唐無稽な話も混在するGメンよりもっとリアリティを追及し、堅実に丁寧に作品を作っている。
だからこそ、10年間も安定して続いていたのだろう。

「特別捜査機動隊」~「特捜最前線」~「はぐれ刑事純情派」~「相棒」。
これが現在まで続く唯一の刑事ドラマのシリーズ化の系譜だ。
他の局もおおいにテレ朝の手法を見習って、刑事ドラマのシリーズ化を本格的に復活させてほしい。

唯一、期待できない局はフジテレビだ。
あそこはもうバラエティやトレンディードラマでいいだろう。

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